『恐竜』リケルメ

ファン・ロマン・リケルメ

恐竜』と呼ばれた選手…


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 今日、YouTubeリケルメを見て驚いた。

異常なまでのキープ力、正確無比のパス、エレガントな身のこなし、時おり見せる強烈なシュート。その中でも一際光ったのが異次元のキープ力。

リケルメのキープは他の選手と一線を画す。あのイニエスタも、メッシも、ジダンでさえも、キープ力ではリケルメに敵わない。体の使い方、ボールタッチ、身のこなし、どれをとっても超一級品だ。どれだけ屈強なDFが来ても全く恐れていない。力みがない。顔色一つ変えずに、飄々とボールを持つ。惚惚するようなボールタッチと体の入れ方でボールをキープする。放っておけば、いつまでもボールをとられないんじゃないかと思わされるくらいに。しかも、キープしているときも周りを把握できている。もう脱帽するしかない。

だからリケルメは、時間を操れる。

「早くパスを出せ!!」そう怒鳴る指導者をよく見かける。だが、それは本質をとらえていない。パスで重要なのは、タイミングだ。

リケルメは常にそのタイミングがいい。時間を操れるからだ。ダイレクトで、ツータッチで、キープしてから、最高のタイミングでパスを出す。早くパスを出せば早くゲームが進むわけじゃない。止まることによって、速さを増幅させられることを、リケルメは知っている。そして何よりすごいのは、普通ならもう持てない状況でもボールが持てるため、あり得ないタイミングで普通なら作り出せないチャンスを作り出すことができることだ。それがリケルメの天才たる所以だ。

 

 https://youtu.be/5V_8rP50ik0

 

そんな彼は、『恐竜』と呼ばれる。もう絶滅してしまったような、一般的に見て古い、時代錯誤のプレーヤーだからだ。リケルメは攻撃では時間を操り、魔法を使っているかのようなプレーをする。王様のようにプレーする。ほとんど走らないし、守備もしない。戦術に当てはめることができない。なぜなら彼自身が、戦術だからだ。リケルメを自由にプレーさせれば、眩いほどの輝きを放ち、チームを勝利に導く。だが、これはリケルメが好調の時に限ってだ。不調に陥ったり、怪我をしてしまえば、もうチームはうまく回らなくなってしまう。そういった危うさもリケルメは持っている。言ってみれば、リケルメはアーティストだ。次々にアイデアが浮かび、素晴らしい絵を描くときもあれば、全く何も浮かばず、何も産み出せないときもある。だから、効率的ではない。でもハマった時は異次元の光を放つ。それがリケルメという選手だ。こういっただれにも真似できない芸当ができるからこそ、恐竜は現代で生き延びることができたのだろう。

リケルメは完璧な選手ではない。でもエンガチェ(アルゼンチンではトップ下をエンガチェと呼ぶ)としては完璧だった。スピードはなく、ディフェンスもできなかったが、代わりに天才的な技巧、センス、創造力を得た。

監督に冷遇されたこともあったが、そういったことも全て含めて、リケルメの魅力なのだ。不完全だったからこそ引き立つ色気があった。

自分のプレーを貫き通した永遠の10番、『恐竜』リケルメ。たくさんの感動をありがとう。